【大崎の食堂】宮城県大崎市 東鳴子温泉 千両食堂

鳴子温泉は滝の湯を代表するような白濁した温泉であり、対して東鳴子温泉は黒く油臭のする温泉である。
温泉好きを唸らせる素晴らしい温泉を味わえる地域なのだが街の衰退は激しい。もっとも鳴子温泉も十分に衰退しているのだが、元々の街の大きさが違うので寂しさでいうと東鳴子は相当なものである(ただ川度はもっと寂しい)。

その東鳴子温泉街で唯一の食堂として営業しているのが「千両食堂」である。

食堂 千両

千両食堂は鳴子御殿湯駅駅を降りて北に進んだ東鳴子簡易郵便局の先にある。
ラーメンの旗がでており、奥まった入り口にのれんがかかっているので飲食の店だと知れるが、店名などは書かれていないので初見では入りづらい。

東鳴子温泉 千両食堂

この店を知ったのは数年前に勘七湯に泊まった時、ご主人が晩ごはんなら玄関を出て左に行ったところにある千両がいいですよと教えてくれたからだ。
が、そのときはすでにお酒を買っており食堂に行く気にはなれなかったので、反対方向のファミリーマート(湯治はスリーエフかなにかだったような気がする)でつまみを買ってすませた。

それから鳴子に頻繁にくるようになって、昼時に近くを歩くことは何度もあったのだけれどなんとなく通り過ぎてしまっていた。
今回は川度から潟沼を経由し鳴子へ抜けるウォーキングで鳴子に到着したのが13時くらいだったので、このまま歩けば昼の混雑が終わったころに東鳴子に到着するだろうと、千両食堂を途中からターゲットにしていた。

13時40分くらいに入店。誰もいなかったのでしばらく待っていると主人が出てきた。
まだ大丈夫ですかと聞くと構わないとのことだったので着席し、かつ丼をお願いする。

東鳴子温泉 千両食堂

そうすると「ちょっと時間がかかるんだけど大丈夫ですか。麺類だと早いんだけど」と聞いてきた。
こちらはぶらぶらしているだけなので構わないのだが一応、かなり待つかと確認すると40分くらいかかるらしい。

40分て相当だと思う。会社の休憩時間で移動に片道10分かかるとすると食べる時間がなくなってしまう。
炊飯から始めるのか?
「時間に余裕があるのならどうぞ」と言われたので余裕がある身として待つことにする。

スマホだけ見て40分は過ごせないので、テレビの下に積んである雑誌の中からゴルゴ13を選んで読む。

東鳴子温泉 千両食堂

店主は調理中のはずなのに時々厨房から出てきてどこから来たんだ、どこに泊まっているんだと聞いてくる。
どうも話好きらしい。その話している間カツはどうなっているのか不思議である。

テレビではコロナウィルスの話ばかりで、店主がもうこればっかりだよと怒っている。
東鳴子の旅館でもキャンセルが多く、旅館の人たちは電話を取るのが怖いらしい。

厨房から出たり戻ったりを繰り返しているうちにカツ丼は完成した。
40分は大げさで25分くらいだった。それでも相当時間を要しているとは思うが、言われた時間より短いので心理的にはいいことだ。

東鳴子温泉 千両食堂 カツ丼

カツ丼を持ってきた店主は横のテーブルに座って話を続ける。

「鳴子でもマスクがなくて困っている。前はマスクなんかしていなかったんだけど毎年春になると頭痛がするのでおかしいと思っていたら、どうも花粉症のようでそれからマスクをするようになった。マスクをするとすごく楽だ、厨房は冬寒くてマスクをするだけでずいぶん違う。その代わり夏は暑い。」

店主の話に相槌を打ちながらカツ丼を食べる。カツ丼のカツはかなり肉厚でうまい。これに火を通すのに時間を要したのか。
考えている間も店主の話は続く。

「数年前に初めてインフルエンザにかかったけど3日間で治った。身体が丈夫なので困っている。」

丈夫なのはいいことじゃないかと口を挟むと、「身体は丈夫なんだけどメンタルが弱い。ちょっと体調が悪いとすぐ休んでしまう、でもそれがいい結果になっているのかもしれない。」

聞いている限りとてもメンタルが弱いとは思えないが、自己肯定感をしっかり持っている状態にあるとメンタルは安定するという心理学の説もあるので、主人の考えも間違いとはいえないだろう。

更に話はトイレットペーパーの不足に展開する。
東鳴子の薬王堂もトイレットペーパーがなくなったそうだ。でも数日前に再入荷したらしい。

このあたりでカツ丼を食べ終えたので、話の腰を折って申し訳ないが会計をする。
帰りに薬王堂によると言うと「マスクはないけどトイレットペーパーを買って帰るといいよ」と買い占め対策に追い打ちをかけるようなことを言っていた。

別に買う気はなかったけれど、薬王堂のトイレットペーパーの棚を見ると見事に品切れになっていた。

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