【大崎の食堂】宮城県色麻町 丸美食堂

かつて地方に活気があった頃、駅前や幹線沿いにはかならず食堂があった。
ラーメンや定食といった日々の昼食、そして家族のお祝いといったハレの日の場のメイン会場となる場所だった。

その食堂が地方人口の減少、そして世代交代での継ぎ手のなさ(将来性のなさ)により、消滅しつつある。
十年一昔というが安定期の十年と違い、今の十年は加速度的である。今の経営者が辞めてしまえばその食堂はなくなってしまう可能性が高い。十年後には個人店はほぼ無くなっているかもしれない。

よそ者の自分がたまたま行ったところで状況は変わらない。それでも地域の旗を見てまわっていきたい。
地方出身で都会に暮らす人間のささやかな貢献である。

丸美食堂

仙台から国道457号を通って加美町経由で鳴子に行くとき、花川を越えてすぐに丸美食堂がある。

イオンに買い物に行ってついでに加美町で昼食を取ろうと思っていたときに、ちょうど花川を越えた信号で止まり、左手に食堂が見えたときには驚いた。
ドライブインが多数あったころそのままのボロさ加減。ここに行かずしてどこの食堂に行くのか!衝動がおきた。
加美町のなかに魅力的な食堂がいくつかあるのは知っている。しかしここを外しては始まらない。そう確信を持って駐車場に車を進めた。

色麻町 丸美食堂

どうだ、この外観。誰でもこの風景が見えればハンドルをきってしまうでしょう?

どれだけの年寄りが迎えてくれるのかとわくわくしながら店に入ると、店内には思いの外若い女性がフロアにいた。
厨房にはそれほど年配ではない夫婦と思われる男性と女性がいて、フロアの女性とは親子なのかどうかよく分からない。

色麻町 丸美食堂

入り口正面にはでっかい水槽があって、金魚か鮒かとにかく赤い魚が泳いでいる。

座席は二人がけのテーブルが二つと、四人がけのテーブルを並べて8人がけにしたテーブルが二つ、計4つがゆったりと並べられている。私が行ったときもそうだったが一人で食べに来る客が多く、相席しやすいように並べて大きいテーブルにしていると思われる。

天井のシーリングファンと殺虫灯も渋い。ともに暑い時期は現役なんだろうか。

メニューは麺類、ご飯物そして定食と老若男女の要求を満たせる構成だが、 ちょうちん定食というのはなんなのだろう。

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ちょうちん定食の謎を追いたいがそれは次回以降にするとして(13時過ぎの入店だったので限定10食が終わっている可能性も高かった)、まずは基本のカツ丼を注文する。

待っているあいだ壁に貼ってある「一斗二升五合」というのはなにかと調べてみると、

  • 「一斗 」 5升の倍「ごしょうのばい」(御商売)
  • 「二升」 升が2つで升升「ますます」(益々)
  • 「五合」 一升の半分で半升「はんじょう」(繁盛)

で、「ご商売ますます繁盛」と読むらしい。すげー、知らなかったよ。

カツ丼は丼に入れられてやってきた。丼ものだから丼にはいっているのは当たり前だが、丼の蓋にはしっかり「丸美」と書かれている。現代の食堂で名入の器を使っているところは少ないと思う。

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一緒にでてきた汁物は麺類の多い食堂にもかかわらず味噌汁だった。
そしてカツはしっかりと卵でとじられている。紅生姜の色合いもいい。

色麻町 丸美食堂 カツ丼

会計時、フロアにいた女性はどこかにいってしまったので、厨房の受け渡しのところでおばちゃんに支払う。
千円札で支払うとおばちゃんはお釣りをとりに引っ込んでしばらく出てこなかった。
本来の会計場所はまったく違うところだったのか。しかし先客も同じ場所で支払っていたしな。

謎は残るが、この歴史ありそうな食堂を発見できたことはラッキーだった。信号で止まらなければ見逃していたかもしれない。
食堂の向かいには「伊達神社(いだてじんじゃ)」というこれまた渋い神社がある。
この日は雪でうろうろする余裕がなかったが、再訪時は神社とあわせて渋みをダブルで味わいたい。