弘前から秋田にJRで移動する際に大館駅で途中下車したことがあって、大館駅周辺にはなにもないことは知っている。そのときは街を探そうと歩いたけれど炎天下で背中のバックパックが重く、長木川まで行って断念してUターンした。
後で聞いたところによると大館の街は東大館駅のほうが近いらしい。
今回はまず東大館駅に向かった。東大館駅は大館の街の玄関ながら想像と違って小さく、無人駅だった。
大館の街
駅は小さいけれど、駅前から続く道に飲み屋が点在する。
ただ「県外客お断り」の張り紙が多いのが悲しい。
昼の飲み屋街なので人はいないけれど、猫はやたらいる。
すでに14時を過ぎてしまったので開いている食堂も少なく、Google mapで見つけた通しでやっていそうな米田食堂に向かう。
おおまちハチ公通りに出て北上して北上する。昼の飲み屋街に人がいないのは当然として、この商店街にもほぼ人が歩いていない。これだけ人がいなければ感染もないだろう。
しばらく歩いて交差点の左側に秋田犬(?)と思われるオブジェクトが見えたらそこを左折する。
この一体何があったんだ!と思わさせるオブジェクトの前に米田食堂はある。すばらしい店構えである。
例えここに食堂があると知らずとも、この店構えを見れば引き込まれてしまうだろう。
なかに入ると椅子に座ってテレビを見ていたばあちゃんが立ち上がって言った。
「肉うどんくらいしかできないけど」
もうなんでも食べます。
このばあちゃんを見て、ご飯物がないなら帰ると言える人がどんな育ち方をしたのか聞いてみたい。
「肉うどんお願いします」と力強く告げると、ばあちゃんはゆでうどんの袋を二つ取り出し、太いのがいいか細いのがいいか聞いてきた。
一つには20円割引のシールが貼ってあり、業務用というよりスーパーで買ってきたゆで麺のようだ。
こういう店ではこれで構わないのである。
うどんを食うというよりも、ばあちゃんを食っているようなものだ。
ばあちゃんは厨房でうどんを作っている。
ひっくり返っている短冊にカツ丼の文字があるので、かつては(今日だけか?)ご飯物もあったのだろう。
ばあちゃんが作ったカツ丼を食べてみたかったぜ・・・。
しばらくしてうどんはやってきた。
馬肉と麩がのっている。完全無欠の食堂のうどんですよ。
これで缶コーヒー付きで400円と非常にお得だ。
食べ終わってばあちゃんと少し話をした。 ばあちゃんは昭和14年生まれ(そう言ったと思う)の80歳。
どこから来たんだ、大館は初めてかとばあちゃんは結構話好きのようで、まだまだ頑張るそうだ。
「今日は天気は良いが風が冷たい。あなたは若いから半袖でも平気なんだろう」
ばあちゃんから見れば若いかもしれないが、自分も人生の半分はすでに折り返しているのである。
メニューには焼酎、お酒、ビールとアルコールがお勧めのようなので、昼食の客が一息ついたあと馬肉皿をつまみにばあちゃんと話したらさぞ楽しかろう。
大館はこれまで通過するだけだったけれど、一気に好きな街になった。
また来るまで元気に店を続けていてほしい。