鳥甲山
秘境と呼ばれる秋山郷から西に見える鳥甲山。東の苗場山の優しさとは反して険しい様相であり、前々から登りたい山の一つであった。
登山ルートは南側のムジナ平登山口から山頂に登り、北側の屋敷登山口へ降る一方通行というのが暗黙の了解のようだ。かなり厳しいルートであることに加えて、屋敷に下山後ムジナ平まで一般道を6kmほど歩く必要があるのでなかなか踏み切れなかった。
ムジナ平登山口
ムジナ平には5時少し前に到着した。すでに1台の車があり、テーブルや椅子が車外におかれているので昨夜からの宿泊組だろう。
登山口は草木が生い茂っており、登山届ボックスはひっくり返っている。
気温は19度。8月といえども人里離れた奥地で、標高も1,000mなので涼しい。このときは気温が上がらないうちに下山したいと安易に考えていた。
5:10登山開始。
最初から急登で白クラまでずっと急登である。最初100cmにしていたストックを急登すぎるので95cmに縮めた。
登り口の案内に「急なヤセ尾根注意」と書いているが、急登とヤセ尾根しかない。また最初の森林帯を抜けると眺望が開けて景色はよいものの、夏の太陽がじりじりと照りつけ体力を奪っていく。
登山開始から1時間5分、すでに汗だくのなか万仏岩登場。
右のはしごの存在がよく理解できない。右側から登って出っ張りを超えて左側に移動できるのだろうか。どう考えても左から真っ直ぐ登ったほうが楽そうである。
登り切ったところで上からのぞく。もう引き返せない。滑落したらどこまで落ちていくのでしょうか。
まだまだ続く急登とヤセ尾根を息を切らしながら登りつづけ、2時間35分で白クラの頭に到着。
白クラの頭で休憩しようと思っていたのだけれど、なんだかジメジメしているので眺望が開けたところで休憩しようと歩き続ける。
急登も終わり緩やかな登りで楽になったけれど、熊笹に覆われてぬかるんでいて楽しい道ではない。
しばらく進むとまた眺望が開け、赤クラが見えてくる。
おそらくこの辺りがカミソリの刃と呼ばれるところで、あまりの切れ落ち具合にクラクラしてくる。このまま飛び込んだら楽になるだろうなぁと考えたりして、そうとう疲れていたんだと思う。
このまま進むとさらに病む可能性があるので、ザックをおろして大休止。食事をとる。出発してちょうど3時間である。
写真の切れ落ちた手前に座り込んでパンなどを食べた。普段ならリスクのあるところに座り込んだりしないので、やっぱり病んでいたのだろう。
鎖を持って慎重に進む。途中、身体の左側に刀のように差していたストックが木に引っかかってかなり恐怖を感じたり、今回の登山の最大の難所だった。
頂上
3時間50分で頂上に到着。
山頂は草木に覆われており眺望はきかない。山頂標識もこの山らしいシンプルさである。
山頂で大量の虫に囲まれ20分休憩して屋敷にむけて下山開始。
尾根を歩く道で秋山郷や苗場山が見えるはずだったが、雲がかかりはじめ遠くが見えない。
稜線の切れているところも見えないと怖くないものである。
赤クラを超えて屋敷山の手前まで尾根を歩くと、そこから登山口までもういい加減にしてくれという感じで急な下りが続き、大腿四頭筋が崩壊する。下ってからアイシングしたりしたけれど、この記事を書いている現在、筋肉痛である。二週連続の登山、この2ヶ月で4座目なのにこの様であり、鳥甲山恐るべしといったところだ。
巨大な砂防堰堤が見えてくると登山口はもう少しである。屋敷の集落を守るための堰堤だろうか。
建設に使用した作業道のようなものは見当たらなかったけれど、どうやって作ったのだろう。
屋敷登山口
登頂から6時間30分で屋敷登山口まで無事下山。
ここからムジナ平までの道の前半は平たんであり、それほどきつくない。
ただ後半ははっきりした上りで自転車でもつらそうである(歩きなのでさらにつらい)。
ちょうどお昼で気温も上がり、アスファルトの照り返しもあり汗がとまらない。
今回はハイドレーションに1.7L(サイズは2Lだが1.7Lしかはいらない)、300mlのステンレスボトル、500mlのペットボトルを2本の計3Lの水を持参したけれど、一般道の途中で残りはペットボトル1本になってしまった。これまでハイドレーションを飲み切ることなどなかったので、圧倒的な水分消費だ。
6kmの一般道(GPSでは5.44kmだった)は結局1時間13分かかり、トータル7時間43分でムジナ平登山口に到着。14.87kmの工程だった。
戻ったときにとまっていた車は3台。途中誰にも会わなかったので静かな山と言えるだろう。
鳥甲山の感想
急登とヤセ尾根で体力勝負になるので、はっきり言って真夏に登る山ではないです。
豪雪地帯なので冬は論外、6月と10月ころがベストだと思う。
どうしても暑い時期に登りたいならば、車を屋敷登山口側に止めて朝の涼しいうちにムジナ平登山口まで一般道を歩いたほうがよい。ムジナ平登山口からの急登の足慣らしにもなるので。
屋敷登山口に駐車スペースはないが、屋敷登山口から屋敷トンネルを抜けたところの交差点に数台とめることができる。