1月は毎年ルーチンとして肘折温泉に行っている。
雪道は運転できないので電車とバスで行く。新山形新幹線を使い昼過ぎに昼過ぎに新庄に到着するのが常であったが、今回は古川まで東北新幹線、古川から陸羽東線で新庄まで行く予定である。陸羽東線に乗るならついでに鳴子温泉に寄ろうと思い、前泊と称して鳴子温泉にも一泊することにした。
東鳴子温泉
古川駅には以前も来たことがあるけれどすぐ乗り換えで駅周りを見ることができなかったので、少し駅を周ってみた。
とくになにもなかった。
新幹線改札のところにプラレールの大きな展示があったくらいか。
あと立ち食いそば屋があった。駅舎内に立ち食いそばがあれば食べるというのがルールであるが(地方に限る)、新幹線のなかでパンを大量に食べたためそばを食べる余地がなかった。
陸羽東線のホームに5分前に降りるとすでに小牛田からの列車は到着していた。2両編成で半分の席が埋まっているくらいの混み具合だ。
陸羽東線に限らずローカル線のワンマン運転に乗ると降り方に悩む。運転席のすぐ後ろのドアから出るのが基本らしいが、そんなことはすぐ忘れてしまうので、ドアの上の乗り方、降り方の説明を熟読する。
数駅、降り方を観察すると早めに前方に移動する人より駅に入ってから移動している人のほうが多い。あせらずとも前方に歩いてくる人がいれば待っているようだ。
とはいっても素人なので、鳴子御殿湯駅が見えた段階で荷物を用意して身構える。ちょうど別の客も降りようとしていたのでタイミングをあわせた。
無事下車(誰でもできる)。
一緒に降りた乗客は迎えの車に乗っていった。車には「旅館大沼」と書いてある。旅館大沼はすぐそこなのにわざわざ迎えにくるんだな。
自分の泊まるところはそういうサービスがないところなので歩いていく。
今年は雪が少ないと聞いていたが、ほんとうに積もっていない。
勘七湯
駅から勘七湯まで歩いて5分もかからない。
東鳴子温泉はここ勘七湯も含め、規模の大きい旅館が多い。それが閉館していたり、使われなくなったりしているので寂れた感じは否めないのであるが、定宿としている川度温泉に比べると土産物屋などもあり、温泉街という雰囲気はある。
旅館にはいって受付にいくと誰もいない。 不在時は電話しろと書いてあるので電話しようかと準備していると、温泉のある右手からじいさんが「だれもいない?」と声をかけてきた。そうなんですよと答えているとじいさんは左手の調理室のほうに行き、これまた高齢のばあさんにお客さんだと話している。ばあさんが奥の方に〇〇と名前を呼ぶとご主人が現れた。
あとで温泉の掲示をみると代表者の名前が〇〇と書かれていたので、おそらくご主人の母親なんだろう。そしたらじいさんは何者なんだ?
素泊まりで4,000円、消費前400円、入湯税150円の計4,550円である。
晩ごはんはどうするんだと聞かれたのでコンビニか薬王堂に買いに行くと答えると、いや歩いていける距離じゃない、あとで送りますよという。前回泊まったときにも同じ会話をしたぞ。
実際たいした距離ではないのである。田舎の人の歩かなさはすごい。
川度温泉に泊まっても薬王堂まで歩くので、それに比べるとごく近くだ。このあたりの人にとって川度温泉まで歩くなどはまっとうな人間のすることではないのだろう。
部屋と設備
建物は玄関のある棟を中心に左右に建物がくっついている。
今回泊まったのは(前回もそうだったが)、6畳間に広縁がついた3Fの部屋である(玄関の上)。古さはあるがとくに困ることはない。ファンヒーターとテレビがあり、お茶セットとポットが置いてある。ポットにお湯ははいっておらず、必要であれば自分で沸かす。
湯治宿の常としてティッシュはない。当然トイレも共同である。
調理場にはガスが二口あり鍋もすこしある。ここで自炊している人は見たことがないが、まあなんとかなるくらいの設備は整っている。
反対側には電子レンジとゴミ箱があるので、最寄りのファミリーマートで買い物をすれば食事には困らない。
冷蔵庫は見当たらなかったけれど、広縁が寒いのでそこに置いておけば十分に冷えた状態を維持できる。なお夏場に湯治場に行かないので暑い時期の対処方法は分からない。
WiFiは使える。ただしWiFiルーターが右手の棟にあるので(右手の棟の部屋が少しお高い旅館部の扱いになっていると思われる)、部屋の奥のほうだと接続はできるものの速度がでない。最初は150kbpsしか出ず駄目だと思ったが、ルーターのところに行って接続したら数十Mbpsでた。 テーブルを部屋の入り口に移動させ、可能な限りルーターに近づけると問題ない速度で接続できるようになった。ただし廊下は空調されておらず入り口に近づけば近づくほど寒いので、加減は難しい。
温泉
温泉は大浴場と小浴場が男女それぞれにある。
大浴場は2つの浴槽があって熱めと温めに別れているけれど、熱め側の浴槽から湯は抜かれていた。温泉の投入口に手を入れるとびっくりするくらい熱いので熱めの浴槽はピリピリきて良さそうなんだけれど、もったいない。
東鳴子に多い油臭のする黒っぽく色づいた湯で大浴場でも十分に匂いがするが、小浴場は更に匂いが濃い。説明を見ると大浴場と小浴場で源泉が違うようだ。温度も違うようで小浴場のほうが小さいのにぬるい。
どちらが良いかは好き好きであるが、油臭が好きな人には小浴場をおすすめする。
深夜2時ごろ温泉に入りにいこうとするとご主人の母親と思われるばあさんがエレベータから降りてきて小浴場にむかって歩いている。1Fの奥に居住用の部屋があるのかと思って気にせず小浴場につかっていると、女風呂の電気がついて湯にはいる気配がする。
ばあさんは部屋に行ったわけではなく風呂に入りに来たようだ。寝る前の風呂なのか、やたら朝が早いのかは謎である。
翌朝、出発前に小浴場にはいっていると別の宿泊客がやってきて、浸かりながら鳴子の温泉の話をした。
鳴子に一人で泊まっているような人はたいてい温泉好きであり、この方も鳴子の温泉にはそうとう詳しいようであった。ただ以前西多賀で話した人もそうであったが、鳴子好きは鳴子ばかり行っていて隣の山形県の温泉には疎かったりする。
鳴子好きの鳴子愛は相当なもんだなと思いながら、お先ですと挨拶して出た。先方の返答は「よいご旅行を」だった。