【湯治宿・自炊宿の宿泊】栃木県那須町 那須湯本温泉 遊季荘

肩の痛みが引かないので整形外科にいったところ、骨に異常はなく、〇十肩ということだった。痛み止めくらいしか対処方法はなく温めて動かしたほうがいいとのことだったので、道路が凍結する前に温泉で一泊し、温熱療法に励むことにした。

那須湯本温泉

一泊なのと降雪が怖いのとで東北まで行く気は起きなかったので、近郊で安い宿がありそうな那須湯本温泉を選んだ。
那須湯本温泉といえば「鹿の湯」が有名で3月に行ったことがある。麓の黒磯あたりはもう春を感じる気候なのに、那須高原まで上がると雪が降っていた。3月の日中なので凍結することもないだろうが、このまま降り続けると帰れなくなるのではと不安になったことを覚えている。

鹿の湯

鹿の湯は6つの浴槽があり手前から温度が上がっていく。最奥の46度と48度の浴槽は常連が周りをびっしりと囲み、よそ者には入りづらい雰囲気がある。
そのときは手前から順々にはいっていき46度まで入った。46度も熱いけれどほかに熱い温泉はいくらもある。48度も入ってみたかったけれど常連の「よそ者入浴断固反対!」という雰囲気で入らずじまいだった。

どこにでも排他的な人はいるものだが、銭湯スタイルの共同浴場にそういう人が多いように感じる。年会費を払う組合員プラス制限をかけて部外者という組合スタイルのところではあまり排他的な人を見かけない(というより組合のところは体を洗って温まってすぐ帰る人が多い)。

那須湯本温泉には鹿の湯のほかに、組合員と宿泊者のみ入浴できる「滝の湯」と「河原の湯」がある。
この二つの共同浴場の雰囲気はどうなんだろう。

遊季荘

鹿の湯に来た時に温泉街をぶらぶらして、魅力的な(安そうな)旅館や民宿が並んでいることは知っていた。
この辺りはもともと内湯ではなく外湯に通うという形態らしいので、お高い旅館は別として魅力的な宿には内湯はないのが一般的なようだ(新小松屋と南月にはあるらしい)。

外湯に通うということは深夜帯は温泉には入れないだろうと思い、値段重視でじゃらんと楽天トラベルを探したところ、「遊季荘」の説明には隣の共同浴場に24時間入浴できると書いてある。
深夜入浴可なのかは定かではないけれども、河原の湯の隣という立地と素泊まりのみの提供という形態に惹かれるものがあったのでここを前日に予約した。

当日、ザ・ビッグエクストラさくら店で夕食とお酒を調達し、そこから那須湯本まで50kmもあったのは予想外だったが、それでも那須湯本に到着したのは14時30分ころだった。さくら市は15度くらいで暖かかったのにここは7度で寒い。ほかに行くところもないのでチェックイン時間前ではあったものの遊季荘に行ってみた。

駐車場は玄関正面にそうとう頑張って2台、向かって左側に屋根付きで2台くらい車を止められるスペースがある。左側の屋根付きは入口の段差がシビアで、狭い道を何回も切り返すのが嫌で正面に車を止めた。

遊季荘

車を降りると硫黄の匂いが立ち込めている。温泉への期待に胸をふくらませながら引き戸に手をかけたが開かない。チェックイン前なので出掛けているのかと途方に暮れていると、温泉で顔が磨かれた女将さんが中から出てきた。
何のことはない、開けようとしていた側の引き戸は閉まっており、もう片側は開くようだ。

フロントで宿帳を記載し、前金で宿泊費3,800円(消費税10%込み)と暖房費300円の計4,100円を支払う。
代わりに部屋の鍵と共同浴場の鍵をもらって、共同浴場の鍵を失くさないよう注意があった。脱衣場に鍵を忘れて出てしまい、取りに戻った時はもう無いということがよくあるそうだ。あと電子錠で結構高いらしい。

フロント横のロビーには水、電気ポットにはいったお湯やグラスなどが置かれたテーブルがある。ブルボンのお菓子も置いてある。

遊季荘 ロビー

反対側には電子レンジとオーブントースターがあり、素泊まりでも困らないようにはなっている。

遊季荘 ロビー

部屋はフロントを1Fとして2Fの東側に和室2室、3Fの西側に洋室2室がある。なかなか複雑な作りで、2Fの中央の畳敷きの部屋の奥に洋式トイレがあったりする。もとはトイレ付の部屋だったのかもしれない。
部屋を案内してくれた女将さんに「ずいぶん奥深い作りですね」と聞くと、忍者屋敷と呼ぶ人もいるらしい。
今回は道路側の3F洋室で、川に面している和室は風が強いときはうるさくて眠れない人がいたりするそうだ。

遊季荘遊季荘

暖房はファンヒーターで、外気が低いため点けていないと非常に寒いが、点けるとすぐに温まる。
テレビと冷蔵庫も部屋にある。冷蔵庫は夏場なら飲み物を冷やすのに便利だろう。ただ今の時期なら窓の外に出しておいたほうが冷えそうだ。
残念ながらWiFiはない。

滝の湯

この旅館は川沿いの建物によくある作りで、道路から見ると3F建て(2F建てに見える)、川から見ると6F建てという土手に沿った建物である。地下3Fに内湯もあったようだが今は使われていない。硫黄泉なので腐食が激しく維持が大変なのだろう。
なので温泉は共同浴場を利用することになる。

まずは規模が大きく混んでいると言われた滝の湯から。

滝の湯滝の湯

滝の湯には上がり湯を貯めている桶があるが、その湯がかなりぬるい。先客が浴槽の温度はちょうど良いのに、なんで上がり湯は温いんだろうと不思議がっていた。

自分も不思議に思ったので夜に行ったときに地元の人らしき客に上がり湯の温度調整はできないのかと聞いてみたところ、「できない。上がり湯用に分けている湯量が少ないので冷めてしまう。これからもっとぬるくなる。」とのことだった。
浴槽と温度差があるのでかけ湯は浴槽の湯でしたほうが安全である。

河原の湯

滝の湯は歩いて5分ほどかかるので通りの寒さがつらいのに対し、河原の湯は隣で便利だ。

河原の湯河原の湯

滝の湯を小さくした感じで、熱めの湯の浴槽の源泉を投入口が二ヶ所あるため、こちらのほうが熱い。

壁面の注意書きに「流し放題での入浴はご遠慮願います」というのがあり、源泉は止められないしどういう意味かと思って旅館の女将さんに聞いてみたら、水を節約しろということではないかとはっきりしなかった。流し放題というのはなかなか聞かない言葉である。

河原の湯のほうが空いているという話ではあったが、17時から19時くらいまでは地元客がひっきりなしに来て建物の前に路上駐車をしている。狭い道だし地元の人といえども路上駐車はやめたほうが良いと思う。道路際が空き地ならまだしも旅館や住居が並んでいる訳で、家の前に車を止められている人は迷惑なはずである。

ただ遊季荘の洋室はこの道路に面しており、路上駐車の有無で河原の湯の混雑状況が分かるので便利という一面もある。
あと3Fの和式トイレの向こうに河原の湯の湯気抜きがあるので、びっくりするくらい声が聞こえてくる。最初はトイレの先にまだ部屋があるのかと思った。

滝の湯と河原の湯に何回か通った後、日本酒を飲みながら映画「勝手にふるえてろ」を見る。演技なのか地なのか知らないが松岡茉優の明るさが良い。スローなブギにしてくれのオマージュなんだろうかと思えるシーンもあった。

その後も深夜まで河原の湯に通った。しばらく人の入っていない熱めの湯は酔っ払いの身体にはビリビリくる。

翌朝、車が通るたびにビシャビシャ音がする。寝ている間に雨が降ったのかと思い、チェックアウト前に河原の湯に向かうと、辺りには雪が積もっていた。