【村山の温泉】山形県河北町 海老鶴温泉

山形市のすこし北に昭和の温泉があるらしいことは知っていた。
知っていたけれど山形県には無限の温泉があるので後回しにしていた。

長井市に到着したのが朝8時30分。さてどこの温泉に行こうかと思い出したのが、海老鶴温泉である。 ナビで検索すると海老鶴温泉は河北町にあった。てっきり山形市だと思っていた。

海老鶴温泉

県道25号を河北町側から向かうと最上川を渡った先で川沿いに右折する。
ナビもそう説明しているのだが、川の土手を走るような道沿いにあるとは思わないので一度通りすぎた。通り過ぎたあとに気づいてUターンして戻った。
ちょうど橋の終端で工事をしていたので、交通整理の警備員は「あいつ戻ってきた。海老鶴温泉知らないのか?」と思ったことだろう。

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敷地には道路側に古い建物があり、反対側に白い新しい建物がある。
白い新しい建物はいかにも温泉館という感じなのでそちらに向かうと、ガラスに営業の説明文もなく、また自動ドアも開かない。
ということはもうひとつの古い建物かとそちらにむかった。

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中にはいって受付で声をかけても誰も出てこない。カウンターの中にあるモニターに自分が写っているだけである。
それでもしばらく呼び続けるとおばちゃんが出てきて「おつり?」と聞いてきた。ちょうど300円あるならカウンターにおいて勝手に入れということだろうか?
手持ちで300円はあったのだが、話の流れ上「そうです」と答えると、店主は食事中なんだと店主を呼びに行った。おばちゃんにはレジを開ける権限はないようだ。

店主が出てくるまでおばちゃんが店主は90歳を超えている、それなのに頭もしっかりしていると店主の説明をしてくれた。ざる屋である。

話を聞いているうちに店主がやってきて、レジを開けてお釣りをくれた。
確かにかなりの老人であるが、トイレを探してうろうろしていると「トイレはこちら」と案内してくれたりホスピタリティもしっかりしている。

浴場にはいると5つのカランからはお湯が出っぱなしである。
壁には「蛇口のお湯は閉めないでください」と書いてある。これは有り余る源泉をシャワーにも使っているということだろう。贅沢なことだ。

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先客がすぐ出たので半開だった窓を全開にして土手を見たり、涼みながらゆっくりつかった。

30分ほどすると年寄りが入ってきたので入れ替わりに出た。年寄りは2Lのペットボトルに温泉を詰めている。飲用可といえども2Lも飲んで大丈夫なのだろうか。年寄りの冷水になりはしないのか(温泉だが)。

脱衣所をでると店主が椅子に座って新聞を読んでいたので、となりの白い建物はなんだと聞くと新館なんだそうだ。

春にオープンするはずが、温泉のパイプの径を間違えて温泉が上がらなくて営業できない。かつてここで魚の養殖をしていて、自分で設計したからパイプのことなど全部分かるんだ。自分が工事の契約をしたわけではないけれど、俺が笑いものになっていると店主は嘆いている。

ここは源泉が二つある。こちらの浴槽は1号源泉だけだけれど、新館には二つの浴槽があってそれぞれ源泉が違うんだ。浴槽ごとに源泉が違うところはそうないだろう。嘆きながらも店主は温泉が自慢げである。

じゃあ今2号源泉はどうしているんだと聞くと、シャワーが2号源泉なんだ、だからシャワーは熱いだろうと予想の斜め上をいく答えだった。
二つの浴槽が違う源泉というのも贅沢だが、浴槽とシャワーの源泉が違うというほうがよほど贅沢である。

しばらく店主の話を聞いたあと挨拶して店主と別れた。
玄関で振り返ると店主はまた新聞に没頭していた。

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